明日の蒼の空
 この日の春子さんは……リサイクルショップにいた。


 手にカメラを持っている。

 私が持っているカメラより遥かに大きなカメラ。

 いかにも高そうに見えるカメラ。



「あの、すみません。このカメラの買い取りをお願いしたいんですが」
 春子さんは、リサイクルショップの店員さんにカメラを差し出した。

「査定をしますので、少々お待ちください」

「はい」

 私は春子さんの横に立ち、一円でも高く売れるように願った。

「こちらの金額になりますが、よろしいでしょうか」

 私が思っていたより、遥かに安い金額だった。

 当然のことながら、春子さんはがっかりしている。

「もう少し、高く買い取ってもらえませんか」

 私は春子さんの後に続いて、リサイクルショップの店員さんにお願いした。

「レンズに少し傷がついていますし、型の古いカメラですので、当店と致しましては、精一杯の買取額なんです」

「……そうですか」

 趣味を取るか、生活費を取るか。春子さんは、カメラを売ろうか悩んでいる様子。

 今さらだけど、私は趣味を取ってほしいと思った。

「その金額でお願いします」
 春子さんは、寂しげな表情で、買取承諾書にサインした。

 リサイクルショップの店員さんから受け取ったカメラの買取代金を、大事そうにお財布に仕舞った。

 お店から出たところで後ろに振り返った。「やっぱり、売らなければよかったかな」

 春子さんは、百円ショップでお買い物をした後、宝くじ売り場の前で立ち止まった。

 ハンドバッグから、お財布を取り出して、スクラッチ式の宝くじを一枚購入した。

「千円でもいいから、当たって。お願い」小さな声でつぶやいて、十円玉で擦り始めた。

 私も当たるように願った。

「あー、外れた。二百円も損しちゃった」
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