明日の蒼の空
 熱にうなさている春子さんの顔を見つめていたところ、日菜子ちゃんと寛太くんが寝室に入ってきた。

「ママ、大丈夫?」
 とても心配そうに春子さんに声を掛けた日菜子ちゃんが持っているお盆の上には、ビスケットとクッキーとペットボトルのお茶が乗っている。

「ママ、ママ、ママ。顔がすごく赤いよ」
 涙声で言った寛太くんは両手にタオルを持っている。

「日菜子……寛太……」
 か細い声で呼んだ春子さんは、苦しそうにベッドから身を起こした。

 スウェットも汗でびっしょり。

 意識がもうろうとしているようで、体を震わせている。

「そのお菓子と飲み物はどうしたの?」
 春子さんは強い口調で問い掛けた。

「隣のおばさんがくれたんだよ」
 日菜子ちゃんが答えた。

「本当なの? あのケチくさいおばさんが?」

「……ごめんさない。スーパーで取ってきたの」
 日菜子ちゃんは震えた声で打ち明けた。

「どうして万引きなんかしたの!」
 春子さんはものすごい剣幕で怒鳴った。

「だって、食べるものがないんだもん」

「ママのために取ってきたんだよ」

 買い置きがないのだろうか。もう、お金が無いのだろうか。貯金が底をついてしまったのだろうか。私はただただ心配することしかできない。
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