熱愛系エリートに捕まりました
部屋を取ってある、と言われたときには、一瞬で頭が沸騰しそうになったけど…拒む理由はなかった。

どのみち今回で最後なのだから、きっと後悔はしないだろうと思った。


「お待たせ。行こうか」

「は、はい…」


手続きを済ませて戻ってきた薬師丸さんに手を差し出され、それに掴まって立ち上がる。

その手は今度は腰に添えられて、ホテルフロア専用のエレベーターに移動する。


50階に上がって部屋の前に立ち、彼がカードキーをドアのスリットに通して鍵を開けるまで、逸る鼓動を必死で宥めながらじっとしていた。

緊張で足が震えて、油断すると何もないタイル張りの床で躓いてしまいそうで、歩くだけでも必死だったのだ。


「どうぞ」

「ありがとう、ございます…」
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