熱愛系エリートに捕まりました
思わず尋ねれば、薬師丸さんは真剣な瞳のまま右手を伸ばしてわたしの頬に触れた。

黒い瞳は少し潤んでいて、目が逸らせなくて、その揺らめきに吸い込まれそうになる。


彼が何かを言いかけて口を微かに開いたちょうどそのとき、リリン、と呼び鈴が鳴った。

その音に驚いてピシッと硬直すると、薬師丸さんはふっと視線を外して立ち上がる。


「出てくる」

「あ、はい…」


リビングを出ていく彼の背中を見送ってから、無意識に詰めていた息を大きく吐き出した。

心臓がドクドクと力強く動いていることに気づいて、体の強張りが解けた。


今さら触れられた頬が熱くなってきて、両手で顔を押さえる。

気圧されるほど真剣で、まるで時間が止まっているような気がした。


さっき、何を言いかけたんだろう…?
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