蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
……良い匂い
毬はそう感じて、満たされた気分で眠りから覚めた。
瞳を開けた瞬間、隣に龍星の姿を見てドキリとした。
「龍?」
これは幸せな夢の続きなのだろうか。
それとも、残酷な現実の一片?
龍星はゆっくり瞳を開くと、そっと毬の名を呼び手を伸ばして招いた。
毬は誘われるがまま、龍星の傍へ寄る。龍星は仔犬を可愛がるように、毬の頭を撫でる。
大好きな匂いがさらに強く鼻腔を擽った。
「ここ、どこ?」
毬はぼんやり聞いた。
「勝手にうちに連れてきた。毬がいないと、眠れない。左大臣には連絡済み」
龍星は夕べ、挨拶に行った際、左大臣から聞いた戯れ言には触れず、簡単に説明する。
毬は辛そうに眉根を寄せた。
「毬?」
龍星が心配そうに名を呼ぶ。
「……勝手に、私の居場所変えないで」
泣き出しそうな、祈るような擦れた声に、龍星は言葉を失い震える毬の身体を抱き締めた。
「また、途中で帰れっていうくらいならっ、最初から」
言葉が続かず毬の瞳から涙が溢れる。
「ずっとここに居て」
「だって」
……また辛い思いをするくらいなら、最初から一緒に居ない方が良い。
毬はそう感じて、満たされた気分で眠りから覚めた。
瞳を開けた瞬間、隣に龍星の姿を見てドキリとした。
「龍?」
これは幸せな夢の続きなのだろうか。
それとも、残酷な現実の一片?
龍星はゆっくり瞳を開くと、そっと毬の名を呼び手を伸ばして招いた。
毬は誘われるがまま、龍星の傍へ寄る。龍星は仔犬を可愛がるように、毬の頭を撫でる。
大好きな匂いがさらに強く鼻腔を擽った。
「ここ、どこ?」
毬はぼんやり聞いた。
「勝手にうちに連れてきた。毬がいないと、眠れない。左大臣には連絡済み」
龍星は夕べ、挨拶に行った際、左大臣から聞いた戯れ言には触れず、簡単に説明する。
毬は辛そうに眉根を寄せた。
「毬?」
龍星が心配そうに名を呼ぶ。
「……勝手に、私の居場所変えないで」
泣き出しそうな、祈るような擦れた声に、龍星は言葉を失い震える毬の身体を抱き締めた。
「また、途中で帰れっていうくらいならっ、最初から」
言葉が続かず毬の瞳から涙が溢れる。
「ずっとここに居て」
「だって」
……また辛い思いをするくらいなら、最初から一緒に居ない方が良い。