蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「本当にあなたは、残酷なことがお好きだ」

龍星は呆れたように言い放つ。
妖狐がギラつく目で龍星を見た。

「残酷?まさかっ
お前は太一の霊を滅した。私は太一の霊を甦らせた。どう考えても私の勝ちだ」

龍星はため息をつく。
この妖怪、心底そう信じているので、余計たちが悪かった。


「偽りの甦り(よみがえり)で何ができます」

「真実の甦りなんてものがあるかい」

妖狐はぬらぬらと笑う。

「偽りの神を崇め、偽りの愛を唄う。そんな人間にはこの程度で十分なんだよ。
見ろ、この女の幸せに惚けた顔を」


律には二人のやり取りなどまるで耳に入らなかった。

去年の冬、流行病であっという間に死んでしまった愛息が今こうして目の前にいることだけを噛みしめていた。

その為だけに夫を殺したのだ――


律は息子をぎゅうと強く抱き締める。

龍星はやりきれない想いで印を結びはじめた。
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