蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「そんなことより、雅之っ、どうしよう。龍、大丈夫かなあ?」

検非違使を見送った毬は急に我に返り、泣きそうな声で聞いた。


「龍星が出るように言ったんだろう?大丈夫だよ」

「でもっ」

毬は今にも泣きそうな顔で屋敷の周りを探しまわっている。

「一応、凄腕の陰陽師だよ。信じてやって」

雅之が毬の肩を掴む。

「でも、過信するのは良くないわっ」

雅之は真っ直ぐ毬の瞳を見る。温かく実直な眼差しで言葉を紡ぐ。

「毬は妖怪と戦える?」

毬は力なく首を横にふる。

「じゃあ、今出来ることは龍星を信じて待つことじゃないかな?」

「でも、雅之は心配じゃないの?」

毬の瞳に涙が滲む。

「俺は龍星を信じてる。必要になったら絶対俺を呼ぶってね。だからいつでもそれに応じられるように、気持ちを落ち着けているんだ」

雅之の言葉に毬は慌てて涙を拭った。


雅之はポンと優しく毬の頭を叩いた。
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