蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
――その頃、邸内では。
印を結んだ龍星が呪を唱えていた。
妖狐は太一になりすまし、甘えた声を出す。
「かあさん、あいつ、僕を消そうとしている!」
「安部様、お止め下さいっ」
律は太一を庇い、鬼の形相で龍星を睨み付けた。
こういう時、正義の在り方がぐらりと揺らぐ。これではまるで自分が悪人だ。
龍星は仕方なく途中で呪を止める。
別に今更妖狐を滅しても、死んだ男が生き返るわけでもない。
それを見て、妖狐はクツクツと喉を鳴らして嗤った。
「それでこそ、我が兄弟」
龍星は唇を噛み締め、ただ立ち尽くすほかなかった。
印を結んだ龍星が呪を唱えていた。
妖狐は太一になりすまし、甘えた声を出す。
「かあさん、あいつ、僕を消そうとしている!」
「安部様、お止め下さいっ」
律は太一を庇い、鬼の形相で龍星を睨み付けた。
こういう時、正義の在り方がぐらりと揺らぐ。これではまるで自分が悪人だ。
龍星は仕方なく途中で呪を止める。
別に今更妖狐を滅しても、死んだ男が生き返るわけでもない。
それを見て、妖狐はクツクツと喉を鳴らして嗤った。
「それでこそ、我が兄弟」
龍星は唇を噛み締め、ただ立ち尽くすほかなかった。