君の世界に彩を。
白色のキズナ
あれから数日、結局だれもお見舞いには来ず、私自身はほぼ放心状態で過ごしていた。
お母さんは毎日ご飯を持って来てくれたけど、お兄ちゃんは仕事のため北海道に帰ってしまった。
お兄ちゃんはたまに私のスマホにボイスメッセージを送ってくれて、嬉しかった。
でも、お母さんに頼んで再生してもらう度に、わざわざボイスメッセージで送ってくれるお兄ちゃんの優しさが、逆にもう目が見えないんだということを痛感させられて辛かった。
ガラガラ...
扉が開く音がした。お母さんかな。
「颯、体調はどう?」
「ん...まずまず...」
「あら、また宙からボイスメッセージ届いてるわよ。再生する?」
私は首を縦に振った。
『おはよう、颯。体調の方は大丈夫か?俺はこれから仕事にいってくっから。リハビリ頑張れよ!』
ボイスメッセージが終わると同時に、お母さんが、あ、と呟いた。
「リハビリって?」
「ああ、ごめんね。颯にはまだ話してなかったわ。実はこの間ね、お医者さんから、颯が元気になったらリハビリを始めてみようかと言われて。」
お母さんは、今すぐにとは言わないわ、と付け足して、私の肩に手を置いた。
そのとき、私の怒りは爆発した。
私は肩に置かれたお母さんの手を払い除け、叫んだ。
「何よリハビリって?勝手にやるって決めないでよ!私リハビリなんてやりたくない!リハビリなんかしたところでどうせ私の目は治らないのに!たとえ治ったとしても、もうあの学校に私の居場所はないのよ!お母さんに私の何が分かるっていうの?!」
もう帰って、と言い残し、私は布団にもぐった。
涙が零れて止まらなかった。
扉が閉まる音が聞こえたから、お母さんはきっと帰ったんだろう。
どうせ私が治るのを心から望んでいる人なんていないんだから。リハビリなんてやんない。
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