君の世界に彩を。
黒色のセカイ
...はっ!
私は突如、目が覚めた。
ここはどこ?
何も見えない、真っ黒なセカイ。
体を起こしてみる。
確か私はさっき──かどうか分からないけど──カラオケ店に入ろうとした時に車に轢かれたんだ。
と、お尻と足にふわふわとした感覚があるのに気づいた。
これは...布団?
手で触ってみる。
うん、きっと布団だ。
でもなぜ布団が?ここは一体どこなの?
ガクガクと身体が震える。
「あ、颯。起きたか。」
っ!誰っ?!
どこにいるの?!
驚いて声が出なかった。
「颯?大丈夫か?俺だそ、宙。」
宙──お兄ちゃん?!
私には、北海道在住の年の離れた兄がいる。
それが、霧崎宙だ。
「お、お兄ちゃん?!どこ?どこにいるの?!」
私は真っ暗な目の先に、震える手を伸ばした。
その手に、温かく大きな手が添えられる。
「落ち着け、颯。俺はここだ。」
お兄ちゃんに握られた指先から、震えが治まっていく。
「おにい、ちゃ...ん」
少し間があった後、なあ颯、とお兄ちゃんが切り出した。
「お前が昨夜事故にあったのは覚えてるな?」
私は、うん、と頷く。
カラオケ店の目の前で轢かれたんだっけ。
「それで、お前はすぐ病院に搬送された。搬送先の病院で医師は、命に別状はないと言った。それから、もう一言付け足したんだ。」
お兄ちゃんはそこでいったん、話を切った。
私はごくんと唾を飲んだ。
見えはしないけど、お兄ちゃんが大きく息を吸ったのが分かった。
「打ちどころが悪ければ、失明する可能性がある、と。」
「...あ、ああ...。」
何となく、そんな気はしてた。
何も見えないのはおかしいなって、思ってたし。
でも、信じられない。信じたくない。
何で私がこんな目に...?
悔しくて、涙が零れた。
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