笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
11 愛らしい笑顔の秘密
 かよちゃんにもらった奇跡のリンゴをかじりながら、まなちゃんと一緒に弘前城を見学して、大勢の人で賑わっている弘前公園で路上ライブを行った。

 今日の稼ぎは、七百三十五円。一時間の稼ぎとしてはまずまず。

 あたしの歌を聴いてくれて、ココアの缶にお金を入れてくれた人たちに感謝感激甘ココア。手拍子をして、ライブを盛り上げてくれたまなちゃんにも感謝感激甘ココア。



 あたしとまなちゃんは日が暮れるまで歩いて、浪岡駅近くの旅館に入った。

 ゆっくりとお風呂に入って、晩ご飯を食べて、荷物を整理した。

 いよいよ明日は、青函フェリーに乗って北海道に渡る。初めての北海道。とにかく楽しみで仕方がない。

「もしもし、こんばんは。まなです」
 まなちゃんが綾香さんに電話を掛けた。

 会話の内容から察すると、かよちゃん家で起きた奇跡のことを話しているよう。

「もしもし、こんばんは。さきです」
 あたしも綾香さんと話して、かよちゃん家で起きた奇跡のことを話してみた。

 綾香さんの声はとても明るくて、自分のことのように喜んでいた。

 かよちゃんにもらった奇跡のリンゴは、あたしとまなちゃんの分を合わせて、まだ十二個も残っている。

 愛する人を想い続けている綾香さんにも奇跡が起こるようにと願いを込めて、かよちゃんと和男さんの奇跡のリンゴを、綾香さんに送ることにした。
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