笑顔と猫とどんぶらこ~フーテンさきの歌紀行~
 路上ライブで稼いだお金を握り締めて屋台に入り、醤油ラーメンを食べて、生ビールと日本酒を飲み、多くの人が行き交う夜の街を歩き回って、ネカフェに入った。

 部屋の中に洗濯物を干している人たちがいる。新橋のネットカフェにもネットカフェ難民がいるようだ。 僅か一畳ほどのスペースが自分の居場所。誰だって広い部屋で暮らしたいと思っていると思う。
 若者や女性の貧困は大きな社会問題。自業自得とはいえ、あたしも貧困者の一人だから、ネットカフェで暮らしている人たちの気持ちは痛いほどわかる。
 一度落ちると、なかなか這い上がれない。負のスパイラルから抜け出せない。明日はどうなるのかわからない。不安と恐怖で眠れない。
 その日暮らしが続くと、心身ともに疲弊してきて、だんだんどうでもよくなってくる。将来に夢も希望も持てず、ただただ過ぎていくだけの日々。
 みんながみんな強いわけじゃない。弱い人もいる。
 どうすれば貧困がなくなるのか。まあ、今は難しいことは考えないようにして、とにかくリラックスすることが大切。

 さすがに三日もお風呂に入らないと体が臭い。
 シャワー室に入って、三日ぶりに体を洗って個室に戻り、ここぞとばかりに無料ドリンクを飲みまくった。
 
 あたしはなんだか急にムラムラしてきて、思わずひとりエッチをしてしまった。
 なるべく禁欲だから、旅のルールに違反していない。
 あたしは変態女じゃない。本能のままに生きているだけである。
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