桜の花が咲くころに

逸らしていた視線を、再び私の方に向けると、先ほどまで浮かべていた笑顔は消えていた。


「じゃあ、何で朝から私を抱きしめたの?

何で…泣いたの?

抱きしめた時、何て…言ったの…?」


今日1日中、ぐるぐると考えていたことを、思い切って聞いた。


「……それは……。」


そこで言葉をいったん区切ると、またいつもの王子スマイルを浮かべて言った。


「きっと、桜に一目惚れしたからかもね。
なんかこう…ズキューンと。」


は?


「感極まって涙が出たのかなぁ。」


はぁ?


「思わず抱きしめちゃった♡

何を言いかけたのかは…覚えてないや!」


はぁぁ??


「…………………。」


私の言葉の読解力が正常であれば、今、サラッと告白されなかった?


みんなの王子に…告白されたの…?


いやいやいや!きっと気のせいだから!


「いや…今日会ったばかりで、あり得ないから!!」


私がそういうと、笑顔を浮かべたままの彼の瞳が揺れた。


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