不器用な彼に恋した私。



「キムチ鍋になります。」
「おー、美味そ、美味そ。」

顔に突っ伏してたら、グツグツと沸騰する真っ赤なキムチ鍋が目の前に。
シメはお米とチーズを入れてリゾットにするそう。
洒落てるな。。


「…いいニオイ。。」
「食え。」


可愛いお指で、目の前にキムチ鍋の具材を入れたお皿を置く。
お箸でつまんで、無言で咀嚼してると、二宮が突然吹き出す。


「…、何よ。」
「黙って食うなんて、お前らしくねー!笑」


バーバリーのシャツを捲りあげて、キムチ鍋を食べ始める。



「だってさ、今日記念日だよ?
1周年、1周年!!」

「うっわ。マジか。それは辛っ!」


ちょー他人事。
そんなふうに顔に書いてるよ、二宮。
まぁ、他人事だけども。。


ううう。

魚のお造りをこれでもかと言うくらいに豪快に頬張った。


「おま、…はぁ。勝手にマグロ食うなや。」


萎える二宮をおいて、アルコールを体に流し込む。
脳裏でグツグツ煮えるような感覚。
悲しくて涙があふれる。



いや、ね。
例えば毎日、好きとか愛してるとかの言葉を言えとか。
プレゼントしたりとか、
エスコートして欲しいわけじゃないの。


でも、これじゃ。
私、いてもいなくても変わらない。



好きって言ってよー……!!










「井上…、お前いい加減にしろ。」



ガシッと掴まれた右手。
どきりとして、ボンボンに腫れた目で二宮を見たら。。



右手の先にかじった串カツ。
左にはタレの入った樽。



「お客様…。」

「2度漬け禁止。」




ポロリ。
串カツが机の上に転がった。
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