恋の相手は…おじさん!?
田中さん
そんな愚痴も吐きながら外で待ってくれている。この時はまだ加藤さんだと思ってたんだ。でも扉を開けた瞬間、私の頭は真っ白になった。そして涙が溢れた…
なんで加藤さんじゃないの?そう声に出して叫んでしまった…目の前のおじさんは誰??
するとそのおじさん、
「加藤さんっていなくなった医者のことか?」と聞いてきた。
そうですけど…と仕方なく返答すると
「そうか…えっとお嬢ちゃん加藤さんの好きだったのか?」と予想外のことを聞いてきた。
「え、分からないです。でもなんか涙が止まらなくて」
「そっか、それはショックだったな。」
あんなに怒鳴り散らしてたのに今度は慰めてくれるおじさん。
「でもな、お嬢ちゃん、悲しいのもわかるし、ショックなのもわかるけど、いつまでも休んでちゃあかんよ。まだ、君は若いから多少の過ちは許される。でも、社会にでてから誰かがいなくなったから無断で仕事休みます。が許されると思うか?許されないだろ。その時点で首切られること確定だよ。」
そう本気で心配し、叱ってくれる優しさが久々でまた泣いてしまった。
「あー、ごめんいいすぎた。嬢ちゃん繊細なのな。」
「あ、いや叱られたのが嬉しくて、加藤さんがいなくなった今優しくしてくれる人はいたけど、本気で心配してくれる人いなかったので久々の優しさに涙が…」
「そっか、嬢ちゃんは家族に大切にされてたんだな。とりあえずさ、俺、嬢ちゃんにクリニックに戻ってきて欲しいんよ。俺じゃなくてクリニックのみんなそう思ってる。」
「うん…でも今まで無断で休んでたし…それに…」
「なんや?なんか気になることでもあるのか?」
「クリニックというよりはこのビルのことなんですけど…私の住んでいる部屋までの行き方が複雑すぎて…」
「もしかして嬢ちゃん52階に住んでいるのか?」
「あ、はい、そうですけど…なんで知っているんですか?」
「いや、だって移動がめんどくさい階なんかそこくらいだしwま、専用エレベーターはあるんだけどな…」
「専用エレベーター…それってどこにあるんですか?」
「んー、教えたいのは山々なんだが、嬢ちゃんまだ完璧にクリニックの人じゃないっしょ。だから難しいかな。嬢ちゃんが戻って来てくれる。就職もここで働いてくれるというなら教えてあげるよ。」
「それは…ありがたいですけど…でも口外禁止なんじゃ…」
「うん。口外禁止。でもそれはクリニックで働く人以外の人には言ったらダメってだけで働く人には言っても良いんだよ。つまり、52階に住んでいる人は全員クリニックで働いてる人、そして、またはその親族しか住んでいないんだ。」
「そうなんですか…てか何でそんなに詳しいんですか?」
「うん、俺管理人だから。」
「管理人さん?1回会ったことある気が…」
「あー、嬢ちゃんあの頭下げて行き方聞いてきた子かぁー。あん時は加藤さんの子どもだと知らなかったんだよ、ごめんなぁ…」
「いや、私もよく説明してなかったので。」
「そうかそうか、で嬢ちゃんクリニックに戻る気はあるか?」
「そうですね…他に行く場所無いですし、おじさんが必要としてくれてるのなら、1回裏切ってしまった私をクリニックの人達が受け入れてくれるのなら戻りたいですね。」
「だってよ。クリニックのみんな」
そうおじさんが言うとクリニックの人達がワーッとぞろぞろやってきた。
「田中さん凄い!」
「そらちゃんの心掴むのうまい!」
「そらちゃん待ってたよー!戻るって言ってくれて嬉しい。」
そう口々に歓迎の言葉を言ってくれるクリニックの人達。
「おじさん、田中さんって言うんですね…」そうおじさんに語りかけると満面の笑顔でおう!と言い、その後小声で今までのことちゃんと謝れよ!と背中を押してくれた。
「えっと、今まで無断でクリニックをサボってしまい皆さんに多大なる迷惑をおかけしたことすみませんでした。皆さんがこんな私を許してくれるのであればまた皆さんと一緒に働きたいです。」
そう私なりの言葉でクリニックの人達に言葉を伝えるとみんな一斉に
「そらちゃんおかえりー!」
と言ってくれた。
そして、私はその日からクリニックに戻り、大学もちゃんと通うようになった。
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