食わずぎらいのそのあとに。

でも、やっぱり調子悪い。

今日はやっぱり早めに帰ろう。定時を少し回るあたりで片づけることにする。お先に失礼しますとチームリーダーの半田さんに声をかけて立ち上がったところで、それは起きた。

起立性低血圧。

つまり立ちくらみだ。



私は体質的にこれを起こしやすい。くらっとするだけでなくて、ひどい時は目の前が真っ暗になって意識を失う。

今回も、あ、と思った時には視野が暗くなってきた。

倒れちゃダメ。

机の角に捕まって、前のめりになるようにしてしゃがみこむ。


「米沢さん?」

驚いている半田さんの声が聞こえたけど、反応できない。

「香さん? 大丈夫ですか?」

「どうした?」

真奈の後に声がするのは、部長の田代さんだ。

「貧血か?」

声が出せなくて、かろうじてうなずく。くらくらするけど目をつぶっちゃダメ、こういう時は。



動かすなとか、人事に連絡入れろとか、冷静な田代さんの指示が飛んでる。真奈の声もする。

「今日顔色悪くて、貧血気味だってお昼に言ってました」

伝わった、大丈夫だ、と安心した瞬間に意識が途切れた。


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