食わずぎらいのそのあとに。
7月の満月

産休ギリギリまで出社するはずだったのに、なぜか7月頭現在、病院のベッドの上にいる。

なぜかってこともない。切迫早産だ。

自覚症状的にはちょっとおなかが張る程度で、あとは疲れやすいのはいつものことだし、出血だってなかったのに。

定期検診で早産しかけているという話になり、自宅安静という手段も一応あったのだけど入院を選んだ。

家では病院にいるほど動かない生活はできなそうだし、何かあったときに自分で救急車を呼べるかもわからない。




診断されたときは目の前が真っ暗になったけれど、時期的にも症状的にもそんなに危険なことはないとわかりホッとしているところ。

「まだ産休までは間があるし、回復したら行けるかなって」

病院の白いベッドの上で強がってみても、お見舞いに来てくれた真奈と沢田は目くばせをし合って「予想通りの発言ですが、お断りします」と断言してくる。

「有給休暇使ってください。足りなかったら欠勤してでも休むようにって、部長も言ってます」

「なんかあったらって、俺らも心配で仕事頼めませんから」

二人によってたかって休職を言い渡されて、結局入院期間も伸びてしまい、今もベッドの上だ。

『今時そんなこと言ってくれる会社ないよ? 普通もっとブラックなんだよ?』と外での勤務経験がないはずの姉にも有難く休ませて頂けと厳命された。




ほんとに。ありがたいことだよね。できることならちゃんと復職して恩返しをしたいけれど、妊娠中からこんなで産後ちゃんと生活できるんだろうか私は。

でも、とにかく元気に赤ちゃんが生まれることが一番。結局私はわかっていないのだ。自分の体調のことさえ。



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