ビルに願いを。

丈もそのまま帰ってしまったし、私も今日はまだ明るい時間に帰る。

『何も作れないよね』と突き放された初対面の時から考えれば、だいぶ扱いが変わったかな。

一緒に仕事をする人間として、少しは認めてもらったってうぬぼれてもいいかな。

髪をなでるあれは、なに? 柔らかく、起こそうとするより寝かしつけるような優しさで。

あ、ケイティと間違われた時もそうだった。似てるんだ、きっと。髪形とかが。

そうか。なんだ。それだけだ。うん。気にしないようにしよう。

私自身は、ビッチとまでは思われてないんだよね? でも、身代わりだ。



いろいろあって今日は疲れてるけれど、いつもの場所まで歩いていって、またビルを仰いだ。

おかげさまでクビにならずにいられてます。
仕事も思った以上に教えてもらってます。


だから、今度こそ丈のために。

早くカリフォルニアに帰れますように。せめて一時帰国でも。


それから欲張ってもう1つ。

またあんな風に笑ってくれたり、自分のことを話してくれたりしますように。





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