ビルに願いを。

ルートの最後は東京タワーを登り、B.C. square TOKYOの写真を撮って願い事をすること。

チーム全員が写真にお祈りスタンプを押すと、最終ゴールの東京湾クルーズ乗り場が表示される。

そこからは早い者勝ちだ。ゴール地点へ一番にたどり着いたチームが優勝。

どのチームも順調。誰がどこにいるのか全て把握するGPS機能はつけられなかったから、一番がどこになるかは難しいところ。



でも丈のチームが一番手だった。チームメイトと肩を叩きあいながら歩いて来るのを遠くに見つけて小さくガッツポーズした。やった!


私を見つけると、合図するように手を挙げた。私も手を振り返すと、ヒューッと冷やかすような口笛が聞こえ、また肩を叩かれながら歩いてきた。

そこへタクシーが風のようにやってきて、降り立った人が走ってきて後ろにあるクルーズ船の写真を撮って、私にハイタッチした。

残念。1位はこちらのチームだ。

丈達の方からうめき声が上がったけれど、丈はそのまま笑っている。出来レースに見えるしね、このほうがいいよね。




大きなクルーズ船は貸切だった。この人数で貸し切るには広すぎる船内の大広間に集まってパーティが始まる。

船内での仕切りや司会は麻里子さん達にお任せした。優勝チームにB.C.の屋上からのヘリ観光ツアーの賞品が発表されると、みんな大いに盛り上がった。

「面白かったよ、アン」

と何人ものエンジニアさんが声をかけてくれた。おまけに改善点や課題などもどんどん言われる。

スマホでメモを取りながら、もう終わったことなのに本当に皆仕事好きというか頭がいいというか、言わずにはいられないんだなと思う。




ひとしきり表彰やゲームなどした後は、ダンスタイムになった。

踊ろうよって誘われたのにしばらくつきあってから、そっと後ろの階段からデッキに出た。思ったより風が強い。

広いデッキを歩いて、誰も来なそうな暗い陰に回ってみた。柵にもたれかかって、海を見る。

終わったなぁ。

丈、楽しそうだった。本物のチーム、できるかなぁ。アプリ関係で協力してもらった人たちと何か始まりそうだと思うんだけど。

遠くに地上が見える。私たちのビルがどれかはわからない。わからないけど、手を合わせてみる。
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