ビルに願いを。

遠足当日。スタートはB.C. square1階のエントランス。各自タブレットを持って、歴史的名所などのランドマークを周り写真を撮りにいく。

チーム全員の写真が照合できれば、チェックポイントクリア。クイズ形式で次の指示が出る仕組みだ。

チーム分けは知らされないままスタートする。最初のチェックポイントが同じ人がチーム。早くチームメイトを見つけて、協力し始めたほうが有利になる。

私はどこのチームにも入らず、ゴール地点で待つことにした。




写真が照合される度、私のスマホに通知が来る。

「順調ね」と一緒に待っている麻里子さんが覗き込んだ。

「杏ちゃんが作ったのよね、これ」

「みんながかなり手を入れてくれたので、そう言っていいのかどうか」

「大学に進まなかったのは家庭の事情だったわよね。 昔からの進学校なのにね、あの高校」

スマホを2人で覗き込みながら、何気なく聞かれる。頭は悪くないんでしょってことだ。

「男の子関係で親と揉めて、道踏み外した感じです」

家庭の事情って言っても、別に親の離婚とか貧乏ってわけじゃない。自業自得。

「そう言う話って聞いたことないわけじゃないけど、似合わないわね」

「見かけによらないんです、悪い方の意味で。すみません」

「杏ちゃん、ジョーのことだけど」

「大丈夫です。わかってます。私ちょっと、遅れてるメンバーに連絡してみます」

無理やり話を切って移動した。言われなくてもわかってるから。ちゃんと話したし騙してない。

丈にとって置物かペット以上の存在になるべきじゃないなんて、わかってる。前に進めるようになれば私の役目は終わりだって。



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