ただ、守りたい命だったから
「潤っ、慈季っ!離れたくないんだ。頼むから見捨てないで。オレをキライでも傍に居させてくれ!」

90度に曲がった腰で、頭を下げる薺。

薺親子はきぃちゃんに送られ、病室にやってきた。

目の下はクマがひどく、髪の毛もボサボサ。

イケメンと騒がれる薺の面影は、もはや何処にもない。

慈季は今日は起きていて、私の腕の中でスタイをガジガジ噛んでいる。

歯が生えてきてるから、気持ち悪いのね。

ヨダレをタオルで拭いてから、歯固めのオモチャを持たせる。

「まんまっ、まんま!」

最近よく言うけれど、ママって言ってくれてるのかな?

「ママ、上手に言えるなぁ~。」

そう言って、櫂琉は慈季の頭を笑顔で撫でる。

なんだか緊迫してるはずなのに、慈季のおかげでホンワカモード。

「慈季~。カイって言ってみな?」

『それは難しいでしょ。』

言わせようと必死な櫂琉。

「ん~~。パパっ!パパパパ。」

手足をジタバタさせながら、薺に向かって何度も繰り返してる慈季。

…パパって、言ってるのよね?

わかるの?

初めて聞いた。

「慈季?パパって言ってくれたのか?!」

薺は大粒の涙を溢しながら、慈季の指にそっと触れる。

「慈季、大好きだよ。ほんとに悪かった。」

「パパパパ。」

慈季は持っていたオモチャで、薺をガンガン叩いてる。


< 42 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop