そのイケメン、オタクですから!
「じゃあ、もう来てくれないんですか?」
「行かねーよ。じゃなくて、メイドカフェは辞めろよ」

「え? どうしてですか?」
「……お前が男に媚び売ってんの嫌なんだよ」

「えー? ゆうぴょんご主人様も喜んでたじゃないですかぁ」

ポカリと頭を叩かれる。
「バ、馬鹿。喜んでねーよ」
「ですよね。恥ずかしがってましたもんね」
「…………とにかく、ばれたらやばいだろ」

あ……そうだった。
浮かれてる場合じゃないんだった。

「それなんですけど……実は斎藤先輩にばれちゃったんです」
「え? よりによって厄介な奴に」と及川先輩が眉を寄せる。

「今日の、その話か……なんて言われた?」と聞かれて、私は先輩に事情を話した。

「だからとりあえず、明日は別れた振りしてください。出来るだけ大げさに。私に振られていらついてる風で」

バイトの事はばれないようにしたい。先輩の努力が認められないなんて、嫌だもん。

「……でもいつまでもそうしてられねーだろ」
先輩は不機嫌そうに答える。私に振られていらついてる風……が気に入らなかった?

「すぐに春休みですし、その間に何とかなりますよ。校則だって変わるかもしれないし、ね」
「……わかった。でも俺が何とかするから、勝手なことはするなよ」

「はい!」
不安な胸の内は隠して先輩に笑顔を見せる。

その後言われたんだった。
「心配だ……お前はナナそっくりだから」って。

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