そのイケメン、オタクですから!

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あれって、どういう意味だったのかな?

春休み目前の授業は誰も身が入らなくて、暖かくなってきた風が眠気を誘う。
窓の外には蕾をつけた桜の木。

桜は好き。
散るのは寂しいけど、咲かなければ散ることも出来ないんだから。

自分の存在をめいっぱいアピールするかのように桃色の花を咲かせて何の未練もないかのように散る。

私も、そんな風に生きたい。

皆が待ちに待った鐘の音が現実に引き戻す。

「今日の授業はこれで終わりなー。水島、号令」
「きりーつ、礼」
「「「ありがとうございました」」」

今日は日直だから黒板を消しに向かったよっちゃんに声をかける。
くりんとした瞳を瞬かせて彼女は振り返った。

「よっちゃん、ありがとう。よっちゃんと一緒の学校で良かった。……これからも、仲良くしてね」

怪訝な顔でよっちゃんは「何かあった?」と尋ねてくる。
「何も、じゃあね」
精一杯の笑顔で手を振って走り出す。

この制服を着て毎日よっちゃんと一緒に過ごした。

バイトのない日は一緒に勉強したし、生徒会に入ってからもずっと一緒だった。
楽しかったな。

1年で終わりだなんて思わなかったから何も考えずに過ごしてきたけど、もっと女子高生らしいことしとけばよかったな。

でも大丈夫だよね。
学校が変わっても、よっちゃんとは友達でいられるよね。

健くんの定食屋さんでまたご飯を食べよう。
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