そのイケメン、オタクですから!

3

翌朝学校の門をくぐると、上靴のままでよっちゃんが走り寄ってきた。

「留愛!……あれ? じゃなくて、早く!」急かされて連れていかれた先は、2年3組だった。

教室に入りきらないくらいの生徒が溢れてて、中がよく見えない。

「お前、俺達のこと売ったのかよ」
「及川くん……私達のこと先生にばらしたって本当なの?」
「バイト自由化とか言って、俺達を犠牲にするつもりだったんだろ」

数十人の生徒に囲まれてるのは及川先輩みたいだ。
周囲の人の言葉の端々から、昨日の名簿の事がばれたんだとわかった。
そんなことをするのはきっと斎藤先輩に違いない。

違う!
先輩は私せいでって叫ぶけど、教室の喧騒にかき消される。

バンッ!
誰かが強く教卓を叩く音が響いた。

「確かに校長に、バイトしてるヤツの名簿を渡した。……すまない」
及川先輩が落ち着いた声を発して、教室がざわつく。

完全に煩くなる前に、間延びしているけど大きな声が続いた。
「でも悠斗、バイトしてないくせに自分の名前も書いてたよね」
桜井先輩の声だ。

「お前もだろ」って及川先輩が返す。

「俺は彼女が、そういう時はたっくんも名前書かなくちゃ、私の店でバイトしてることにしてあげるからって言うからだよ」

桜井先輩の彼女って一体。
店ってなんの店?
関係ないけどすごく気になる……。
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