そのイケメン、オタクですから!


「出たな!怪獣ツバサーク!」
私の3倍はある斎藤先輩に似たメガネの怪獣が、数式の問題を並べ立ててくる。
せめて漢字か英単語なら何とかなるんだけど、数式はやっぱり無理!

周囲を見渡すけれど誰もいない。
灰色のビルに囲まれた交差点で何故か戦う?私達。

私はピンクのチェックのシャツをインして、ちょっとサイズの大きなチノパン。
ツバサークの問題に頭を抱えたら、つるつるした久しぶりの感触。

あれ?
黒髪ウィッグを被ってる。

「元素番号47番は?」
私が答えられないものだから、ガラスの向こうのツバサークは口の端を上げてまた一回り大きくなった。
ガラス? そっか、伊達メガネしてるんだ。

「Ag、銀。簡単すぎだろ。ピンク大丈夫か?」
後ろからかかった声に振り向くとレッドが走ってくるのが目に入った。

赤のチェックにチノパン、黒縁メガネは懐かしい。
右手にはペン、左手には分厚い参考書。

「は、はい」
「良かった。ピンクに手を出すなんて許さないぞ!世界の首都キーック!」

何、その必殺技。
全然強そうに見えないし格好よくないんだけど。

「アイスランド共和国はレイキャビク、アイルランドはダブリン、アゼルバイジャン共和国はバクー……」
え、これってあいうえお順に全部の国言うの?

ちょっと引くんだけど……。

「うおーっ」
念仏みたいに首都を唱えるレッドの声でツバサークはどんどん小さくなっていく。
効いてるし……。

最後には豆粒みたいになって逃げて行った。

「ありがとう、レッド」
二人の戦いに呆気にとられてたとは言えないので、私は作り笑いでレッドにお礼を言う。

レッドは前髪をかき上げてメガネを外し、いきなり顔を近づけてきた。
「ピンクが無事でよかった。んっ」

って、何でいきなりキスなの?!
しかもオタクモードは終了なの?

急に狼にならないでよーーーー!!

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