そのイケメン、オタクですから!
「悠斗のはこれ。僕のはこれだけど、自分で入れるからいいよ。君たちもマイカップ持っておいで」
そう告げられてよっちゃんと二人「はい」と返事をする。

よかった。桜井先輩はいい人みたい。
それに比べてあの偉そうな奴。

適当に開けた引き出しに七味が入っているのを見て、コーヒーに入れてやろうかと考える。
コーヒーは黒いから、赤が目立つかな。いや、気づかないんじゃないかな。

……無理かな?

じーっと七味を見つめてる私の顔を、桜井先輩が「聞いてる?」と覗き込む。

「す、すいません。聞いてませんでした」
「素直でいいけど、悠斗の前でボーっとするのは気をつけた方がいいよ。
で、悠斗はコーヒーブラックね」

「はい。ありがとうございます」
インスタントコーヒーの瓶を掴んで粉を適当に入れる。

ブラックでコーヒーなんて飲んだことないし、どれぐらいの量入れればいいのかな。

まぁ適当でいっか。

マグカップの底が粉でいっぱいになるくらいに入れて、お湯を注ぐ。
よっちゃんと話してた桜井先輩がこっちを向いて何か言いかけたけど、私はもう及川先輩のところに戻っていた。

「お待たせしました」
「ん」

んっ、って何なのよ。
ありがとうとか一言ないかな。
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