そのイケメン、オタクですから!
ええ……理解しましたとも。
でもあの状況で黙ってるなんて意気地なしじゃない。

「あんなこと言われて言い返さないなんて。先輩は腹が立たないんですか?」
質問に質問で返してしまって怒られると怯んだけど、先輩は何も言わない。

私を睨んだだけだった。
意志の強い瞳に、自分が馬鹿なことを言ってしまったんだと気づく。

……腹が立ってないわけじゃない。
トラブルを起こしたって選挙に響くだけだから、ポーカーフェイスであしらっているんだ。

それなのに私、あのまま口論していたら斉藤先輩のこと殴っちゃうところだった。
それは斉藤先輩の思うつぼだったってことだよね。

「……ごめんなさい」
うなだれた私の頭を、先輩がポンポンって叩いた。

ウィッグがばれちゃうんじゃないかとびくりとしたけど、見上げた先輩は優しい目をしていた。
「でもちょっとスッキリした。サンキューな」

……そういう顔は反則だと思う。

女として興味はないってはっきり言われたところだし。
私だって及川先輩の事なんて何とも思っていないのに。

勝手に、心臓だけはドキドキしちゃうじゃない……。
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