そのイケメン、オタクですから!
「バイトだろ。今どき中学生が職業体験やってるぐらいだぜ。高校でバイト禁止って、ありえないっての」

「そ、そうですか?!」
思わず声が裏返っちゃった。

「スーパーのレジもコンビニも、高校生ばっかじゃん。大体隠れてしてるやつなんか、何人いると思うんだよ」

「えっ、でもバレたら退学……」

「今までバイトが理由で退学になったやつ、成績はかなり下位だったんだよな。学校からすれば、厄介払いみたいなとこあるんじゃねーの?」

そうか、進学校だから有名大学の進学率を上げたい。成績の悪い人は学校から減らしたいんだ。

「え、でも、じゃあ退学になってない人もいるって事ですか?」

「まぁ、それははっきりしないけどな」

先輩は言葉を濁したけど、私は完全に浮き足立つ。

だって先輩、説得力あるし!
これなら本当に校則変わるかも。

それにもしもバイトがバレても、今や私は成績上位者!……今回だけだけど。
退学も免れるかもしれない。

「そっかぁ。先輩、頑張りましょうね!」

思わず気合いを入れて先輩の手を握る。

途端に先輩の頬が紅葉みたいに色づいた。
私からそっぽ向いてパソコンを叩き出す。

先輩、画面上文字化けみたいな記号が並んでますけど……?

「ま、まずは生徒アンケート、次いで保護者アンケート。さ、さっさとお前も考えろ」

後ろから「ふふっ」て桜井先輩の笑い声が漏れた。

「さ、私たちもやろ」
よっちゃんがノートパソコンを運んできて開いた後「よかったねぇ。色々と」と意味深に呟いて電源を入れる。

色々と?
よくわからないけど本当に良かった。

3学期中ってことは2年生からは堂々とバイト出来るかもしれないってことだもん。
保護者アンケートの方は先輩が担当してくれてるみたいだから、私は生徒用のを作ろう。

まずはアルバイトをしたいと思うか、だよね。
で、勉強とアルバイトの両立は可能だと思うか、とか?

私は夢中になってアンケート作りを始めた。
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