そのイケメン、オタクですから!

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さすがに年末年始は生徒会も休みだし、私はバイトに励むことにした。
3学期になったらすぐにアンケートを取って、集計して生徒の署名を集めて、やることは沢山ある。

セノジュンレッドは先輩じゃないと思い込むことにすると気が楽になって、意外とメイドカフェは楽しくやっている。

明日から新学期の夜。

「ねぇ、留愛。話があるの」
バイトから帰ったら、珍しくアパートにすっぴんのママがいた。
お高い化粧品を使っているからなのか、年の割に肌はつやつやなんだよね。

「どうしたの?」
ママに話があると言われていい話だったことは一度もない。
思わず身構える。

「ママ、結婚しようと思うの」
今まで結婚しようと思うと紹介された人も何人かいたけど、ヒモだったり結婚詐欺だったり最悪だった。
夜の仕事をして私を養ってくれたママは、やっかいな男の人に捕まるのが特技だ。

「……どんな人?」
「うふ、お医者様」

ダメだ、完全に騙されてる。
ママがお医者さんと付き合うことは想像できない。

そもそもホステスのママに本気になるお医者さんなんているわけない。
いくら美人でも、派手すぎて医者の奥さんって雰囲気じゃないもの。

「働いてるところ見たことあるの?」
「ないわよ。でも絶対そうなの」

何を根拠に絶対と言えるのか。
ママの能天気さはある意味奇跡だ。

私も単純なところはあると思うけど、ママほどじゃない。

「開業資金が必要とか言ってない?」
「もう、変な事ばっかり言う子ねぇ。開業ならもうしてるわよ。今度紹介するからね」
「なんて病院?」
「えーっと、高町クリニック、だったかな。二駅先の駅前」

高町クリニックね。
近いうちに見に行こう。
きっとそんな病院はないんだろうけど。
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