うそつきなあなたへ
少女は、吟遊詩人から離れないようにぴったりとくっついて歩きます。
けれど、本当にすごい人です。村で全員が集まることがあっても、こんなに息苦しくなることはありません。
人の多さにも驚いていたのですが、落ち着いてくると今度は物の多さにも驚いてしまいました。
カラフルな洋服、みずみずしい果物や野菜、高く積み上げられた多くの本。
匂ったこともない不思議な香り、遠くから聞こえる軽快な音楽。
「おーーい、お嬢ちゃん! 目移りする気持ちは分かるが、早くおいで」
声のする方向を見ると、吟遊詩人が遠いところから手を振っていました。
知らないうちに、離れていたようです。慌てて吟遊詩人のもとに駆け寄りましたが、ここの人達はみんな歩くのが早くて、なかなか前に進みません。
歩くというより、なにかに追われているかのように早歩きなのです。