donor
この後始業式をこなし、教室に戻ってSHR。
簡単な連絡を済ませると、今日はもう帰っていいと神田が告げた。
「明日は新しい教科書を配るから大きめの鞄持ってきてな」
そう言い残すと神田は出席簿と共に教室から出ていった。
後ろ手で扉を閉めた瞬間、教室の喧騒が戻ってくる。
俺はその喧騒に乗っかり、卯月に声をかけた。
「この後どする?どっか行く?」
「久しぶりの早起きで眠気やべえから今日は帰るわ」
「おっけ、また明日」
俺は机の横に掛けていたリュックサックを肩から提げ、チラりと少女を盗み見た。少女は六番の生徒…つまり少女の右隣の席の女の子と雑談をしているところであった。
首を左に傾けるのは癖なのだろうか、などと勝手に解釈していると、少女がこちらを振り向いた。
ドキッとし、思わず目を逸らすと、あのソプラノが俺に向けられた。
「一ノ瀬くん、だっけ。席、ご近所さんだね」
相変わらずのんびりとした口調。
教室の席なのに'ご近所さん'という独特の世界観を広げる少女は再び首を傾げ、よろしくね、と呟いた。
「おう、相田さんよろしくな」
一拍置き、絞り出た言葉はありきたりなもので。あぁ、もう少し気の利いた台詞を練習しておけば、と少しだけ後悔した。しかし少女は、気にした様子もなく
「さん、付けなくていいよ。初対面で、こんなこと言うのもヘンだけど、一ノ瀬くんは、そういうの、付けない人だと思う、から」
少女が言う通りだった。俺は基本的に人を苗字で呼び捨てにする。
もっとも、相手の苗字も'一ノ瀬'だった場合や、恋人になった者の呼び名は流石に名前であるが。
正直かなり驚いたけど、特にその様子を表に出すこともなく無難に少女に返す。
「おっけ、んじゃ相田。今日はもう帰るから、明日からよろしく」
リュックサック背負い直し、前方の扉に向かう。ぷらぷらと手を振り、少女にじゃあな、を告げた。
簡単な連絡を済ませると、今日はもう帰っていいと神田が告げた。
「明日は新しい教科書を配るから大きめの鞄持ってきてな」
そう言い残すと神田は出席簿と共に教室から出ていった。
後ろ手で扉を閉めた瞬間、教室の喧騒が戻ってくる。
俺はその喧騒に乗っかり、卯月に声をかけた。
「この後どする?どっか行く?」
「久しぶりの早起きで眠気やべえから今日は帰るわ」
「おっけ、また明日」
俺は机の横に掛けていたリュックサックを肩から提げ、チラりと少女を盗み見た。少女は六番の生徒…つまり少女の右隣の席の女の子と雑談をしているところであった。
首を左に傾けるのは癖なのだろうか、などと勝手に解釈していると、少女がこちらを振り向いた。
ドキッとし、思わず目を逸らすと、あのソプラノが俺に向けられた。
「一ノ瀬くん、だっけ。席、ご近所さんだね」
相変わらずのんびりとした口調。
教室の席なのに'ご近所さん'という独特の世界観を広げる少女は再び首を傾げ、よろしくね、と呟いた。
「おう、相田さんよろしくな」
一拍置き、絞り出た言葉はありきたりなもので。あぁ、もう少し気の利いた台詞を練習しておけば、と少しだけ後悔した。しかし少女は、気にした様子もなく
「さん、付けなくていいよ。初対面で、こんなこと言うのもヘンだけど、一ノ瀬くんは、そういうの、付けない人だと思う、から」
少女が言う通りだった。俺は基本的に人を苗字で呼び捨てにする。
もっとも、相手の苗字も'一ノ瀬'だった場合や、恋人になった者の呼び名は流石に名前であるが。
正直かなり驚いたけど、特にその様子を表に出すこともなく無難に少女に返す。
「おっけ、んじゃ相田。今日はもう帰るから、明日からよろしく」
リュックサック背負い直し、前方の扉に向かう。ぷらぷらと手を振り、少女にじゃあな、を告げた。