ラズベリーな恋模様(A・T)



クリスマス限定、ということで建てられたばかりなはずのその建物は、何百年も放置されていたかのようにボロボロの廃墟に見える。


リアル。

そのため、廃墟の中も精巧に作られているのだと、安易に想像できる。
だからこそ、余計に恐怖をそそられる。


「最後尾、二時間待ちでーす」

スタッフの人の言葉に、思わず驚愕の声が出そうになった。



「ね、ねえ、とも?二時間って、長くない?」
「そうか?限定物だし、遊園地だったらこんなもんだろ」
「い、いや、長いよ!長すぎる!ねえ、違うの乗ろうよ」
「……もしかして冬穂、怖いの?」

必死にお化け屋敷を避けようとしている私に、灯は図星をついた。


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