偶然は運命的で必然的だった
リビングに降りるとお姉ちゃんが
ちょうど支度を終えて学校に向かうところだった。

「なんで起こしてくんなかったのさ!」

「あんたが起きなかったんでしょ!」

よく見たら私が今日着ようとしてた制服をお姉ちゃんが着てた。

「あーー!!!!!」

「行ってきます」

お姉ちゃんは何食わぬ顔をしていってしまった。
お姉ちゃんは私にとって悪魔でしかない。

昨日の夜私が着ていくって話してたのに。

「ママ、日向先輩は!?」

「先に行ってもらったよ」

…ありえない。

私は急いで部屋に戻っていつもの制服を着て
またリビングに降りてご飯を食べて家を出た。

どんなに時間を確認しても日付を確認しても
今日は2008年4月12日でしかなかった。

私は遅刻をしていても急いで自転車を走らせた。
だってまだ急いだら先輩に逢えるかもしれないから。

雲が浮かんだ空。

いつもの登下校の道。

なんにも変わりやしない平凡な毎日。

つまんない。
でも…先輩が近くにいるこんな日常だけは変わらなくていい。

先輩は私が中学1年からいま高校2年まで4年間片思いしている人。

日向狐夏先輩。

いまは私と同じ高校に通っていて1つ上の先輩でお姉ちゃんと同級生。

ただ先輩と一緒にいる分だけたくさんの悲しみと苦しみと楽しみとドキドキと少しの不安を覚えてきた。

だって1年学年が上がってしまえばまた先輩に近づいて気づかない間に私の好きな季節が来て秋が過ぎて冬が来てまた春を迎えるころには先輩はどこか遠くへ行っちゃうから。

そんな痛みを覚えてもう4回も1人ぼっちの冬を迎えて暖かい春を迎えた。

そんな恐怖をなぜか今年は一段と濃く感じる。

先輩は173センチ。

視力はあまりよくない。

普段はコンタクトだけど授業の時たまにコンタクトが痛くて眼鏡をしている

私は前髪をちょんまげにして眼鏡をしてる先輩がすごい好き。

好きな食べ物はからあげ、クレープ、ケーキ。辛いものはダメ。
好きな飲み物はいちごみるく、パインアメが好き。

髪の毛はサラサラ、色白。

先輩は…犬みたいなそんなイメージが強い。

先輩のことで分からないことなんてない。

昨日のご飯だって知ってる。
昨日はエビフライと音素汁とご飯。

なんでここまでわかるのかっていうといつも暇さえあれば電話するから。

お姉ちゃんは先輩は芹花のことが好きだっていうけどそんなはずない。

だって…先輩の隣に私は釣り合わない。

でも…いつかは先輩の隣を歩きたいって思う。
思うけど自信なんてこれっぽっちもない。

だって…先輩が中学3年生の時生徒会の秘書の人を特等席に乗せて一緒に帰ってる姿を見たことがあるから。

その人に勝てる自信なんてない。
その辺にいる高校生と変わらない。

こうやって先輩のことで頭をいっぱいにしているともういつもの坂の上まで来た。

少し向こうにいつも通る大きな交差点が見えた。

やっぱり先輩には会えなかった…

私は音を立てて坂道を下った。

坂道を下ってる途中少し前に先輩を見た。

こんなに大好きな人のこと私が見間違えるわけがない。
私は先輩に声をかけようとしてブレーキを握った。

「大丈夫」

そう言い聞かせた。

…けど

ガシャンッ!!!!!!!!!

ブレーキが効かない。

「え!?なんで…止まれ!!!止まれ‼!止まれ止まれ…」

どんなに願っても自転車はスピードを落とさず交差点へ突っ込んでいく。

もし今日寝過ごさなかったら
先輩に事情を話して先輩の特等席に私が乗れたかもしれない。

もし今日寝過ごさなかったら
また先輩が近くにいる幸せな平凡的な日常がまた今日もあったのかもしれない。

もし…寝過ごさなかったら
私は明日を迎えられたのかもしれない。

もし…。

そのまま私は交差点へ突っ込んで少しして大型トラックと衝突した。

右半身に激痛が走る。

体は宙を舞う。

ふと視界に先輩の顔が見れた

「先輩…」

私はそのまま意識をなくした。
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