偶然は運命的で必然的だった
私はまたあの夢を見た。

セピア色の風景と波打ち際。

またこのもどかしい追いかけっこだ。

それ見いつも見てる夢と何も発展もしてなくて何にも変わっていない。

「先輩?」

「芹花ちゃん」

手が届きそうになっては消えて、立ち止まれば現れて、また消える。
なんでこんな意味のないことばっかり繰り返すんだろう。

先輩はこんなに意地悪な人じゃない。
私はまた立ち止まって泣いた。

そして耳障りな音が鳴り響いて曇ったセピア色の景色が崩れだした。

「んー…」

朝は嫌いだ。
うっすら目を開けると神秘的な光が差し込んだ。
私は痛くてまた目を閉じる。

ふとなんだかその眩しさが気になって手探りでケータイを探して今日を確認した。

≪2008年4月12日≫

はいそうですね。

≪8時30分≫

盛大に遅刻しました。

私はケータイをつなげっぱなしにしてリビングに行った。
リビングのカーテンは淡い緑でそれがまた眩しくって目の奥の痛さにむかついた。

「ママ、お姉ちゃんは?」

「30分前に行ったよ?」

うそでしょ。

私は置かれていたサンドイッチを頬張ってテレビではじまった星占いを見た。
ママがいれてくれたココアはミルク多めのいつもよりは少し冷たく出てきた

「まだ先輩に間にあうかもね」

ママの言うその言葉に私はさらに焦りを感じた。
でも、もしいまからでも急いで向かって間にあうのなら急いで向かって
先輩にお弁当を作れなかったことを全力で謝る。

でも朝からなんだかおかしな気がしていた。

いつかもこんな1日を迎えたようなそんな気がした。

でも今はそんなことを気にするよりは先輩のことで頭はいっぱいいっぱいだった。
制服のかわいいほうはやっぱりお姉ちゃんが着ていてしまってた。

私は仕方なく久しぶりにネクタイを締める。
別にこの制服が嫌いなわけではない。

ただ…今日はかわいくいたかった。ただそれだけなんだ。

8時も終わる少し前私は急いで家を出た。

今日に限ってなんか自転車の鍵が刺さりにくい。
まぁそれも仕方がないか。

だって今日は12星座のうちの12位なんだから。

…♪♪♪

こんな時に限って電話がかかってくる。

「はい?」

私は少し焦り気味の声でその電話に応えた。

「芹花ちゃん?起きましたかー?」

その声は私の大好きな人の声でした。

「今日はほんとうにごめんなさい!!」

「あーお弁当の事?」

「はい…」

「芹花ちゃんってクロワッサン好き?」

「はい!大好きです♪」

「売店行って用意しておくからお昼休み一緒に食べようや♪」

「いいんですか?」

「迷惑?」

「いや、全然!!」

「じゃぁまたお昼に」

そういって電話は切れた。
周りの音を聞いてたらもう学校についてる様子だったから
もう先輩に登校中の道で逢えないのは確実だけど
先輩と1つ約束ができたそれが嬉しくて。

なんだかいつもの平凡な1日が、今日は特別な1日に思えた。

学校に着いて1限目の国語の先生にはやっぱり怒られたけど
それでも反省文でさえもへっちゃらだった。

3限目先輩の好きな歴史の授業の時隣の席の美夏ちんから手紙が回ってきた。

「遅刻するなんて珍しいね」

「今日寒くない!?」

「確かに」

「なのにお姉ちゃんセーター持って行っちゃってさぁ。
寒くて寝過ごすし最悪だよぉ」

「今日はついてないんだね。今日も一緒にお昼ご飯食べる?」

「あ、ごめん今日は先輩と一緒にご飯食べる約束しちゃってて」

「そっか!わかったよ♪」

「ごめんね」

そんなことを手紙で先生にばれないように
やりとりをするのも私たちのひそかな楽しみだったりもした。

おかげでテストはいつも全然いい点数なんて取れないけど。

4限目終わりの掃除の時間私と美夏ちんと
同じクラスの男子3人は教室の掃除に回された。

もしこれが1週間遅れていたら校庭の掃除で
もしかしたら先輩との約束もぎりぎり間に合わなくなっていたかもしれない。

そう思ったら12位の割にはラッキー!って思った。

掃除も終わって

「あとは片づけておくね」

美夏ちんがそう言って私の分の箒を片付けてくれた。

私は走って先輩の教室に向かった。

私たちのクラスは2階にある。
先輩の教室は向かいの校舎の1回。

全然2年生の私は足を踏み入れることなんて特別な用事がなかったなかった。

それに上靴の色だって違う。

1年生は黄色2年生は赤色3年生は青色だ。

だから向かいの校舎1階に私が歩いてるだけで
あまりよくない感じの人とか普通の人にですらきょろきょろ見られるし
こういう雰囲気はあまり好きじゃない。

先輩のクラス3年5組に到着して先輩はいるかなぁって
教室の中をきょろきょろしてみたけど先輩の姿は全然見つからない。

もしこの教室の中にいるならこんなにも大好きな人を見つけられない私なんて
信じられない。

でも5分ほど探しても全然見つからない。

教室の中にいた少しやんちゃそうな女の人と目が合って怖くなって
私は逃げようとした。

「ねぇ!!」

ふりむいたらその先輩が私のほうを見て手招きをしていた。

怖くて逃げたかったけどいまここで逃げてもきっとやばい。


だから私は振り返って

「なんですか」

勇気をもってその先輩に返事をした。

「大津芹花ちゃんだよね!日向とラブラブの!」

私はそう言われて真っ赤になった。

ラブラブなんて別にそういう関係じゃない。
ただ…私が一方的にあの人のことが大好きなだけ。

きっと狐夏先輩にはそんな風に映っていないし
もしかしたら先輩の頭の端っこにすら置かれていないのかもしれない。

「先輩…は?」

「あぁ!日向?先に言ったよ、行こう!!」

その女の人は私の手を握ってその校舎の屋上へ歩いていった。」

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