俺様副社長のとろ甘な業務命令
「そっか……」
「それにしても、良かったの? 最後に話しなくて」
「え……あぁ」
「言っておくけど、私は何回も起こしたんだからね? ゆずが全然起きないから」
「うん、ごめん。大丈夫」
返事をしながら、ふと、開いたお財布の中に仕舞っておいた副社長の部屋のカードキーが目に入った。
「あっ」と思わず声を出してしまった私に美香子が「何?」と反応する。
「あ、ううん。何でもない」
「もう帰るでしょ? 課長たちはもう一軒行くとか言ってるけど」
「うん……あ、でも、ちょっと先行くね、忘れ物したから取りに行ってから帰るから」
バッグを掴みコートを着ないで持ったまま、勢いよく立ち上がる。
少し前まで寝ていたとは思えない素早い私の動きに、美香子が「えっ?!」と驚いた顔をしていた。
急いで出口に駆けていく私の背中に「え、だったら待ってるよ」と美香子が声を掛けてくる。
「ごめん、大丈夫だから先帰ってて!」
「あ、ちょっと、ゆずー!」
呼び止める美香子に振り返り、もう一度「ごめん、お疲れ!」と言ってお店を後にした。