俺様副社長のとろ甘な業務命令



誰にも捕まらず上手いこと一人きりで送別会の席を後にして、乗ったエレベーターの地下五階を押す。


すっかり忘れていたカードキーの存在。

これを預かったままというわけにはいかないと思い立った私は、先に帰ったという副社長の部屋を目指していた。


地下五階に降り立つと、田中さんが「こんばんは」と今日も癒しの笑顔で私を迎えてくれる。


専用エレベーターに乗り込み上昇する感覚を覚えながら、鼓動が次第に速まっていくのを感じていた。


さっき見ていた夢を思い出す。

夢の中の自分は恥ずかしいくらい素直で、いなくなる副社長に寂しいという気持ちをぶつけていた。


あんな夢を見てしまうなんて、あれが私の本心なんだろうか。

一瞬そんなことを思ったものの、まさか、と思い直す。


でも、本当にこれで最後。

もしかしたら、もう会うこともないかもしれない。

だから、最後にちゃんと感謝の気持ちは伝えたいと思う。


五十二階に着き、静まり返る通路を歩いていく。

手にしていたカードキーで玄関の扉を開いた。


< 157 / 179 >

この作品をシェア

pagetop