俺様副社長のとろ甘な業務命令
誰にも捕まらず上手いこと一人きりで送別会の席を後にして、乗ったエレベーターの地下五階を押す。
すっかり忘れていたカードキーの存在。
これを預かったままというわけにはいかないと思い立った私は、先に帰ったという副社長の部屋を目指していた。
地下五階に降り立つと、田中さんが「こんばんは」と今日も癒しの笑顔で私を迎えてくれる。
専用エレベーターに乗り込み上昇する感覚を覚えながら、鼓動が次第に速まっていくのを感じていた。
さっき見ていた夢を思い出す。
夢の中の自分は恥ずかしいくらい素直で、いなくなる副社長に寂しいという気持ちをぶつけていた。
あんな夢を見てしまうなんて、あれが私の本心なんだろうか。
一瞬そんなことを思ったものの、まさか、と思い直す。
でも、本当にこれで最後。
もしかしたら、もう会うこともないかもしれない。
だから、最後にちゃんと感謝の気持ちは伝えたいと思う。
五十二階に着き、静まり返る通路を歩いていく。
手にしていたカードキーで玄関の扉を開いた。