俺様副社長のとろ甘な業務命令


これ以上ここにいてはいけない。

そう本能が叫んで、すたすたと副社長の目の前まで歩み寄り、手にしていたカードキーを差し出す。


「これは、お返しします」


顔も見ないままそう言い、受け取られるのをじっと待つ。

カードに副社長の指が触れるのを目にするとサッと手を引っ込めた。


「では……」

「斎原」


くるりと背を向けた私を呼ぶ、副社長の声。

もう何度も聞いてきているのに、今はそれだけで胸が締め付けられて息が苦しくなる。

やっと出した「はい」は、蚊の鳴くような声だった。


「ちゃんと顔、見せろよ」


降ってきた声に、どんな顔を見せればいいのか全く見当もつかなかった。

笑顔を作れるわけもない。
泣くわけにもいかない。


今、見せられる顔なんて、私には……。



「無理、です」


返事一つやっと絞り出し、キュッと硬く唇を結ぶ。

逃げるように一歩を踏み出しかけた、その時だった。

背後から力強く腕を取られ、動きを封じられる。

ビクッと震えた体を、背中からすっぽり包まれていた。


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