俺様副社長のとろ甘な業務命令
言いたいことはたくさんある。
だけど、副社長を前にすると何から話していいのかわからなくなる。
そんな私の次の言葉を待つように、副社長は穏やかな笑みを浮かべて私を見つめていた。
「明日……早いんですよね? すみません、お忙しいところ」
そんなことを言いたいわけじゃない。
だけど、上っ面な台詞が口を突いて出てくる。
「あの……短い間でしたけど、ありがとうございました。あちらに戻られても、体に気を付けて、頑張ってください」
これで、もう最後。
自分から話を締めくくり、別れの挨拶を告げる。
さっきの夢の中の自分がしていたように、全身で副社長の姿を見つめることなんてできない。
ただ、副社長の締めるペイズリー柄のネクタイを見つめていた。
「ありがとう。斎原もな」
聞こえてきた声に、ギュッと心臓が鷲掴みにされたような、そんな痛みを感じた。