俺様副社長のとろ甘な業務命令
目を疑うというのは、こういうことを言うのかと思った。
飛んでいったグロスを握りしめ、じっとこっちを睨むように見つめているその姿。
忘れるはずもない、昨日の出来事……。
あんぐり開いた口が閉じてくれない。
「おはようー! みんな、ちょっと手止めて集まって」
呆然と立ち尽くしていると、あとから来た牧瀬部長が目の前を横切っていく。
部長に続きながら、キャッチしたグロスを無言で私に押し付けていくその人。
去り際、フンと鼻で笑われた気がした。
「え、何、ゆず知り合い?」
固まる私に顔を寄せて美香子が聞く。
知り合いも、何も……。
「きっ、き、昨日、話した……あの」
「えっ?! うそっ、嘘でしょ?」
どうやら嘘ではないらしい。
部長と並んで立つ姿は、間違いなく昨日の人。
スーツを汚してしまった、あの人だった。