俺様副社長のとろ甘な業務命令
そんなこと、言われるなんて思ってもみなかった。
きっと、嫌味の一つや二つ浴びされると思っていたのに、間逆のような言葉を掛けられ息が詰まる。
いっそのこと、責められてひたすら謝る方が良かった。
何でお前のミスをこの俺が、とか。
ファイル一つまともに送れないのか、とか。
いくらだって言いたいことはあるはずなのに……。
「おい、聞いてるのか?」
「……。あっ、はい、聞いてます」
「だったら返事」
「はい……」
「行くぞ、送ってくから」
「あのっ」
「……何?」
「……ありがとう、ございます」
「別にいい。大した距離でもない」
サッとカバン掴み、副社長は颯爽とデスクを離れていく。
ありがとうの意味……わかってないでしょ。
遠ざかっていく広い背中を見つめながら、心の中でそう問いかけた。