俺様副社長のとろ甘な業務命令
副社長の車に乗るのはこれで二度目。
社員情報をチェックされていたのか、何も言わなくても住んでいる方面へと車は走っていく。
「わざわざすみません」
そう言ったきり、会話は続かなかった。
沈黙が落ちた夜の車内は思いの外居心地は悪くなく、むしろ疲れのせいか眠気が襲ってくる。
この最高の座り心地も手伝って、今にも瞼が落ちてきそう。
まさかうっかり寝てしまわぬよう、シートから背中を離して身じろぎする。
「昼は悪かったな」
睡魔と戦っている中、突然横から声を掛けられた。
顔を向けると、副社長は真っ直ぐ前を向いたままリラックスした様子でハンドルを握っている。
スッと鼻筋が通った横顔が綺麗で、目がさめるような感覚を覚えた。
「モデルの候補出し、チェックできなくて」
「あ、いえ」
「さっき見ておいた。あれだけ絞れば決定会議もスムーズにいくと思う」
「そうですか……それなら、良かったです」
自宅マンションの付近までくると、細かい道順を聞かれて案内する。
「その建物です」と教えると、エントランスすぐ前に車をつけてくれた。
「わざわざすみませんでした。お疲れのところ」
送ってもらったことだけじゃない意味も含めてお礼を口にする。
膝の上のカバンに手を掛けたところで「斎原」と名前を呼ばれて顔を上げた。
頬に少し冷たい指が触れる。
ピクッと肩を揺らした時、その手に顎を掴まれた。