俺様副社長のとろ甘な業務命令


「いらっしゃいませ」


早速スーツを着込んだスタッフが近付いてきて、副社長が慣れた様子でやり取りを交わす。

緊張のせいかその会話を遠くに聞きながら、あっという間にフィッティングルームに連れて行かれた私は、スタッフの方おすすめというワンピースを数着試着することとなった。

袖を通すのも申し訳なくなるようなハイブランドの服を前に、平常心が保てない。


「こちら、今週入ってきた新作になります」


そう言って手渡されたワンピースは、ブラックの膝丈ワンピース。

ウエストから切り替えになったデザインで、フレアのスカート部分が上品なレースのデザインになっている。


「素敵……ですね」

「きっとお似合いになると思いますよ」


いやいやいや、とんでもなく恐れ多い。

勧められたワンピースは、私が着るには身に余る素敵なもの。

試着室に入ってからこっそり見た値札は、今までアパレルショップで買ったことのない高額なお値段で、思わず二度見して桁を数えてしまった。

手渡されたワンピースを手に、試着室の中で一人あたふたしてしまう。

慎重に袖を通し、巨大な鏡に映る自分を見つめた。


すっごく素敵……だけど、私には……。


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