私の彼氏は超肉食系

日本人としての義務

それから、3年の月日が流れた。

スギヤマ監督の映画は準主役クラスの交代でおよそ半年を掛けて脚本を作り直し、撮影期間は2年を越えていた。

私に合わせた撮影スケジュールが組まれていた所為かもしれない。

表立って誰からも文句が出なかったのは、スギヤマ監督の鶴の一声と主役である『台地マキ』さんが率先してスケジュール調整してくれたかららしい。

しかも、合間を縫うように撮影された『一条ゆり』監督作も2作品公開され、毎回興行収入を上回ったのは、私がスギヤマ監督作品の準主役に抜擢されたと公表されたからだと思われる。

そのスギヤマ監督作品もあとわずかなシーンを残すのみとなっていた。

この作品は『マキ』さん演じる主人公と私が演じる医者が、ひとりの男性を取り合うという愛憎劇である。

変更前の脚本には無かった親友同士となりお互いに相手を傷つけたくないという葛藤が描かれていた。

最後のシーンはロケ現場での撮影なのだが、ここにも撮影期間が延びた要因が隠されている。

主人公の出生の秘密を暴くため、田舎の町医者のお宅に3人で訪れるところから場面は始まる。

昭和初期に華族によって建設された別荘は山奥の過疎の村には似つかわしく無いほど立派な建物だった。
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