イジワルな彼と夢みたいな恋を?
(どれだけ熱血なのよ、こいつ)


冷めた中学生だった私には、一ノ瀬圭太の言葉が一々鬱陶しく思えた。
それでも一緒に学級委員をこなしていかないといけなかった。


五月の半ばに入るとオリエンテーリングがあった。
宿泊学習という名の下、逃げ出せない海辺の合宿所で二泊三日間の訓練が行われる。


班決めも担任が勝手に決めたからクラス中は大ブーイングだった。
仲の良かった者同士が引き裂かれたところもあり、不安そうにしてる子達もいた。

そんな中で一ノ瀬圭太はグループの班長を呼んで集めた。


「二日目のカッター訓練でどこのクラスよりも一番になろうぜ。それで担任に何か奢らせるっていうのはどうだ?」


担任には反感を持ってる生徒が多かったから、各グループの班長は良いアイデアだと乗った。

とにかく人の感情を逆手に取り、上手い具合に軌道に乗せるのが上手。

そのアイデアがキッカケで、私達のクラスは急に纏まりだした。



三日間の訓練は楽しかった。
勿論規則は厳しくて、朝から夜までぴっちりとスケジュールは組まれてる。

カッター訓練では沢山のマメが手にできて潰れて痛かったし、それがお風呂のお湯に触れると痺れたようになって辛い。

でも、一ノ瀬圭太の声を聞くと、皆は不思議なくらいにヤル気が湧く。

カッター競争ではダントツの一番になれたし、キャンプファイヤーでの出し物も私達のクラスだけが一番盛り上がってた。


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