プロポーズは金曜日に
「豪華でいいですねえ」

「でしょ?」


親子丼を伊波くんは玉ねぎで、私は白菜で作る。


でも、前に伊波くんに玉ねぎで作ってもらった親子丼が甘くてすごく美味しかった。


美味しい美味しいと騒ぎつつ素早く完食してしまい、いつもより数段速いペースにびっくりされたのはちょっとだけ苦い思い出だ。


玉ねぎの親子丼も美味しかったけど、慣れ親しんだ白菜の親子丼も好きだから、次作るときは両方入れようと決めていた。

野菜もたくさん食べられるし。


伊波くんもそれを覚えていてくれたらしい。


二人とも、大学生になって一人暮らしを始めた口だ。


ずっと自炊を心がけていたし、一人暮らし歴は長いから、一通りの家事はそれなりにできる。


「あ、そうだ。伊波くん、もうデザート食べちゃった?」

「まだです」


それじゃあ、と思いつきを提案する。


「この間一緒にぶどう買ったでしょ? 今日はそれ食べようよ」


たまにこうして、離れていてもおんなじものが食べたくなるときがある。


分かりやすい我がままに、伊波くんはいつも付き合ってくれている。


「あ、いいですね。じゃあ半分くらい食べて、残りは麻里が今度来たときにとっておきますね」

「ありがと。私もそうする」


この間一緒に買い物に行ったときに、二人とも一房ずつぶどうを買った。


最初は一緒に食べようかと思ったんだけど、二人とも違う種類のものが買いたかった。


私は小粒で薄い紫色のもの。伊波くんは大粒で濃紺のもの。


お互いに食べたい種類がはっきりしていて、他の種類のものは一粒二粒食べられれば充分だったから、じゃあそれぞれで買うことにして、後でお裾分けをしようという話になって、二人で違うものを選んだのだ。
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