プロポーズは金曜日に
——そう。問題は。


今日が金曜日で、金曜日になると伊波くんが変になるということである。


すっと声が一段低くなったので構えれば、思った通り。


「……麻里」


あ、伊波くん眼鏡取った。


きた。これはきた。


声が一段低くなって眼鏡を取って私の名前を呼んだら、変なスイッチが入って、伊波くんがおかしくなってしまうのは確定だ。


もう慣れた。

ここのところ、金曜日になると何故かスイッチ入るんだもん、伊波くん。


伊波くんはスイッチが入るとキメ顔とでも言えばいいのか、恐ろしく作った顔をする。


そして、作った顔のくせして、一体どこに隠してたんだその色気は、というくらい、妙に恐ろしく色気が漂うのだ。


ほんと、ふわふわな緩い笑顔の人とは思えないほど、別人になる。


普段は三十路でこんな可愛い人いていいのかってくらい可愛いふわふわした人のくせに。


造作が美しく整った人は、少し硬い表情でもやっぱり美しい。
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