プロポーズは金曜日に
構えた雰囲気の中、じっと私を見つめる眼差しは、妙に作り物めいているくせに、確かな熱を孕んで。


落とされる言葉は、突拍子もなく耳慣れない口調になり。


大抵腕を組んで格好つけて、流し目なんかしちゃっている。


私はそんな伊波くんに、いつもちょっぴりときめけない。


「ねえ、伊波くん」


伊波くんは多分、少し方向性を間違っている。きっと、努力が空回りしている。


「あのね、結婚したいって思ってくれるのは嬉しいよ。頑張ってくれるのは嬉しいよ。だけど私……私……っ」


勢い余って詰まった喉が苦しい。何だか泣きたいのは、きっと息苦しさのせいばかりでは、なく。


「麻里?」


——ねえ。


「え、あの、麻里? 麻里、」


——ねえ。


いなみくん。

すばるくん。昴くん。


好きだよ。好きなんだよ。


……好きって言ってくれるって言ったくせに。


好きって言ってくれるって、言ったのに。
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