【完】『けったいなひとびと』

経済紙の見開きは翌日、

「花輪屋創業家、全株式を売却」

という文字が躍り、このニュースはたちまち本社のビルを駆け巡った。

この新聞を読んでいたのは、さきにさやかに声をかけた弁護士の竹内護である。

「…秀島さやか、なかなかやるじゃないか」

これがもちろん駿の発言が原因だとは誰も分からない。

が。

この株式の売却のショックは創業家の名を冠して、

「本間インパクト」

と呼ばれ、これで花輪屋が名実ともに創業家から独立した企業になったことを意味した。

いっぽうで。

駿たち従業員たちの一日は変わらない。

贈答品の準備で外出をしていた駿も、相変わらず黄色のケータハムセブンのハンドルを捌きながら、高架下の国道を三宅坂の方向へと走らせていた。



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