【完】『けったいなひとびと』

柏木はグラスを始末しながら、

「僕なんか現役のときなかなかコーチとうまくゆかんくて、ようそれで二軍落とされたりしてました」

「…二軍?」

舞が首をかしげた。

「こいつ元プロ野球の選手やってん」

「へぇー、すごーい!」

「でも何で辞めちゃったんですか?」

さとみが訊いた。

「まぁ見切りってやつですかねぇ」

「見切り…?」

「プロ野球の世界はとにかく結果が全てで、打率とか勝率とか残さんと年俸は減る、下手したら戦力外通告を出されてまう」

「戦力外通告…」

「そうなったら何か腕に技術をつけて生きるしかない。で、たまたま僕はお好み焼きが焼けたんで、自由契約のあとお好み焼き屋開いたんですわ」

「そうなんだ…」

「なんかそのあたりは私がいたファンドと変わらないなぁ」

さやかはワインを口にしたあと小さく言葉を発した。

「うちのファンド、年俸制で隔年契約なの。それで、投資で利益をいくら出せとかってノルマがあって、これが結構きつかったなー」

さやかは目線を遠くにやった。



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