【完】『けったいなひとびと』
タクシーは走り出す。
追い掛ける。
が、本間新吾の目の前をトラックが遮り、
「あぶねぇんだよ、このバカ野郎!」
運転手が怒鳴った。
本間新吾は無視してタクシーを追おうとする。
降りてきた運転手がそこを捕まえて、
「飛び出しといて逃げようったって、そうはゆかねぇぞ!」
運転手が馬乗りになって、本間新吾を何度も顔だの頭だの殴り付ける。
「これで警察に突き出してやる!」
と、運転手が馬乗りになったまま、電話をかけはじめた。
結局このあと本間新吾はホテルのドアマンに軽症を負わせたとして、暴行で逮捕された。
くだんの運転手は犯人の検挙に貢献したとして賞状をもらったらしく、それらの一部始終を新聞で知ると、
「いやはや、冷や汗かかされたわ」
と後日、柏木を相手に駿はぼやいたのであった。